倉敷に着いてから、駅を少し離れて声に出してそれメロディを鼻唄ってみた。ぶらぶら川沿いに寝不足の頭で小さな声でふんふん歌っていたら、ミッチェル氏とムーチョさんの弾いた曲だなぁと思い出した。ミッチェル氏とムーチョさんはギターの部活の先輩である。ラウ゛ェルの亡き王女の為のパウ゛ァーヌ(以下パバーヌ)という曲だ。ジュリアン・ブリームやら村治香織やらも弾いている。そのメロディが頭を離してくれない。
眠たい頭でカタカタパソコンをいじり、楽譜を探してみたらすぐ良い楽譜が見付かって、コーヒー片手に楽譜を読んで、最初のところだけ弾いて遊んだ。
これは良い曲。
どんなに良い曲でも良い本でも、気付かないと一生気付かない。それは損なことだ。作品を作るってのは非常に時間のかかることで、その上、当然ながら全ての作品が成功するとは限らない。良い作品ってのには凄く人間の時間が詰まっている。今の時代ならCD一枚買ってプレイヤーに突っ込むだけでそれをたしなめる。ぶらっと本屋に行って一食我慢するだけでその本を手に入れられる。ラッキーなのだ。
しかし、ミチェさんとムーチョさんが弾いてなけりゃ僕はそういう曲に出会う機会すらなく、麻雀明けの電車を退屈に乗っていただけかもしれない。彼らがどういう経緯でその曲をやることにしたんだか知ったこっちゃないが、僕はボケーッとしていて気付いた時にはその曲を知っていた。やはりラッキーなのだ。
ラッキーボーイは亡き王女を知り、或る朝頭の中にぷかぷか思い浮かべる。ラッキーボーイなのだ。
これから小説の核の部分に必要な人に会って来て、明日は学校。ふふん。
まあ、そんなこんな。
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