2019年09月26日

箱庭、茅野。

来月から茅野という土地に住むことになったので、妻君とアパートを探しに出掛けた。妻君の腹はもう随分と大きくなっていて、留守番しているのが良いかとも思ったが、妻君としては見知らぬ土地、本当に全く一度も行ったことのない土地なのだから住む前に一度は自分の目で見て家を決めたいということで、二人で出掛ける。

茅野という土地は長野県にある。
長野県という土地は山ばかりである。
ボコボコと山ばかりある中に少しへこんだような形で盆地がある。長野の人は平、タイラと呼ぶらしい。
盆地は大きく分けて三つで長野市のある平、松本市、伊那市のある松本平、そして諏訪市、岡谷市、茅野市のある諏訪平といった具合だ。
さて、その諏訪平に住むことになるのだが、諏訪平は三つの盆地の中では比較的小さい。その上、諏訪湖という大きな湖がある。
湖とは景色は良いけれど、車が当然通れない。湖の反対に行くにはぐるりと湖沿いに行くことになる。人が住む平らな土地は少なく、湖周りの交通の便は良くない。
しかしながら、この諏訪平というのはミニマルで箱庭といった様相があり、非常に文学的な雰囲気のある土地である。
箱庭的美しさというのは、長野県の三つの平にいずれもあるが、諏訪平は一番狭いからか非常に箱庭感がある。
その中でも茅野とは八ヶ岳に向かって少しずつ登っていく土地であり、坂の美しさがある。少し行くと、気付けば坂を登っているので、箱庭的美しさのある諏訪平、そして美しい八ヶ岳を見られる。
そのまま映画を撮りたいと思わせるような土地である。

群馬から一つ目の山、軽井沢を越えて佐久に行き、そこから二つ目の山、八ヶ岳を越えて諏訪平に着く。
この二つ目の山を越えるには高速道路がない。随分遠回りをしないと高速ではいけないし、当然、平らな土地で行ける道はない。非常に不便である。しかしながら、途中で白樺湖がある。
白樺湖はさほど大きな湖でもない。
今の時期は紅葉もしていない。
しかし、標高が1400mほどあり、周囲の山の形も美しい。
長野の山は同じ県内でも場所によって随分と形が違う。険しい北アルプスに対して、八ヶ岳は緩やかで優しいカーブがある。八ヶ岳より東の群馬側になると妙義山で有名なギザギザの形の山になる。
こうも分かりやすく山の形、雰囲気が変わるというのも珍しい。

妻君と二人、何軒か見て回ったが、想像以上に賃貸の相場が高い。
このくらいの町の規模なら、普通もう少し安いように思うのだが、全くもって安くない。
群馬の市街地と同じくらいか、ちょっと高いかくらいだろうか。
群馬も大都会ではないが、仮にも関東平野である。東京までのアクセスも決して悪くないので、新幹線通勤で東京の本社に通う人も住んでいる。そう、新幹線が通っているのだ。新潟、長野、金沢につながる主要高速道路、新幹線とがある。企業もスバルなどの大メーカーもある。単純に人口だけ見ても諏訪平の岡谷市、諏訪市、茅野市を合計しても高崎の方が倍くらいはある。まあ、高崎も広いので都会じゃない土地もあるのだが。
そう考えるとなぜ茅野の賃貸がこんな値段するのだろうと思うのだが、なぜか高い。

高い、高いと文句を言っていても仕方ないので、何軒か比較して相場を掴んでいく。

それにしても、この土地は面白い。
狭い箱庭的な土地なので、少し場所が変わるだけで随分と環境が変わる。まず標高が変わる。特に茅野は東側は八ヶ岳に向かってゆるやかに登っていくので、直線距離で数キロ離れるだけで気温が1〜2度くらい変わってしまう。気温だけじゃなくて空気の感じも違う。眺めも違う。
西の岡谷、諏訪方面の方が諏訪平の中心なのでそっちの方が平らで家や店も多い。

狭い平なので道は細く曲がりくねっている。
その上、電車の線路もあるし、川も流れているので、行きたい方に道がつながってくれない。くねくねと曲がってしまう。
狭い平も全てが真っ平らなわけでもなく、小さな丘みたいになっている場所もある。
また長野県というのは道路を作るのに予算を出さないのか、主要国道も狭い。
言うなれば町全体がどこか古い。

これ、悪い意味じゃない。
狭い平に大きな湖、細くて曲がりくねった道、鉄道と川、そして八ヶ岳に向かって緩やかに登る地形。
映画撮るならここじゃないか、と思わせるような箱庭感がある。

残念ながら古い町並みなどはあまり保存されているわけでもないらしい。
でも、僕としては逆にそこが好きでもある。
僕の故郷は倉敷、町並み景観が保存された観光地である。そういう町も良いけれど、どこか気取ってる。
最近の倉敷はもう分からないけど。
何だか観光客も昔より増えてしまって、大きなショッピングモールが駅の反対に出来てしまって。町並みを保存しているエリアもハリボテみたいになってしまっていた。
町並み保存地域から少しのところにマンションが建ち並んでもいる。
たまに帰省する度に思うのだが、故郷はどんどんと気品を失ってしまう。
それは過去の記憶が美化されてしまっているせいかもしれない。
それでも、僕らが学校をサボって麻雀をしていた神社も謎の観光客が増えた。神社に観光ってなんだそりゃって気はする。
そこの神社は高校生が学校をサボったり、御百度参りするおばちゃんがいたり。そういう地方の町の普通の神社であるべきだと思うのだが。
まあ、散歩するにはとても良いところなので観光コースになっても不思議ではないのだが。
それにしても、どうも気品を失っていくように僕には感じられる。
そんなこと言うのは年寄りになっていっている証拠なのかもしれないが。
それでも、昔の思い出の町云々だけじゃなく、やはり気品に欠ける気がする。
まあ、元々気品などない観光客にこびた観光地、そんなもんだったのかもしれないけど。

そう考えると、僕は変に町並み保存した観光地よりも、自然と残っている古くさい、少しうらぶれたような町の方が好きなのだ。
それこそ、狭い平の箱庭みたいな町の、さびれた景色など素敵だと感じるわけだ。

諏訪湖のわきの安い民宿に泊まって、妻君と新しく生まれてくる子どもと暮らす家も決まった。
子どもとしては茅野ってどうなんだろう。

長野出身の知人の話を聞くと、
「山に囲まれて閉じ込められているみたいで嫌だった。大人になったら東京に出たいと思った」
という話が多いけど。
僕と妻君にはとても素敵な土地のように映るのだが。

そりゃ、茅野の極寒の冬をまだ体験していないからだろうか。
注意しないと水道管が凍結して破裂するらしい。

「僕らが小学校の頃は校庭にプールの水をまいて、それが凍った上でスケートの授業なんかしたんですよ。最近は暖かくなったから出来なくなったみたいですけど」
そんなこと、日本国内でありえるのか、などと驚きつつ。

大人になって選んで行くには良い土地だろうと僕と妻君は思うのだが。
住む土地を選べずに生まれてくる子どもにとっては、寒くてつらいかもしれないが。

妻君と二人での旅行はこれで最後になってしまった。
これからはしばらく家族三人での旅行になるのだろう。もちろん、喜ばしいことだけど。
若い時代が過ぎ去って行く。
人生が急に加速して過ぎ去って行く。

最近の僕はランニングで走るようにしている。
そんなにストイックなわけでもない。
むしろ、客観的に見ればイージーな部類だろう。週に2日ほど五キロずつ走る。月に8日走れば一応四十キロだ。まあ、サボることもあるんだけど。

自転車でどこか遠くに、たっぷり時間をかけて行くことは当面できない。
子どもが生まれると一日中かけて、ゆっくりロングライドするのも難しくなるだろう。

それでも、僕は走るべきだろう。
理由なんかないけど。
何でも良いから走るべきだろう。
そんなにハードじゃなくても良い。フルマラソンで何時間を目指すとかでもなくて良い。
汗をかいて、息を切らせて、一生懸命走るべきだろう。

自転車でも良いんだけど、自転車は時間がかかるので、当面難しそうだ。

一日に30分とかで良い。
毎日とかじゃなくても良い。
週に何日とか決めなくても良い。
体が走りたいと思った時、走りたいと心が感じた時、汗をかきたい、息を切らせて動きたい時。

理由などないけど、何かしらの形で僕は走り続けるべきだろうと思うのだ。

ま、そんかこんな。
posted by ちょろり at 02:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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