2019年10月24日

さようなら群馬。

群馬最終日。
荷物を引っ越し屋に渡して、Sさんご夫婦に挨拶に出掛けた。
あまりにもちょくちょく、しかも突然に押しかけるので迷惑かなとも思ったが、僕はSさん夫婦の所に遊びに行って話を聞くのが好きなのだ。
Sさん夫婦は浮世離れしていて、そして正しいことを言う。
もちろん、世の中に絶対的な正しさなどないのだが、少なくともSさん夫婦の話というのは僕にはとても正しいことのように感じる。

生きるとはイージーじゃないけれど、ただ食事のために生きては寂しい。
それでも、日々生きていくためにはやはり先立つものはお金であり、仕事に忙殺され、良い音楽を聴くだったり、自転車を楽しむだったり、本に触れるということから離れてしまいがちになる。
もちろん、それは悪いことじゃないし、僕も次第にそうなっていくだろう。

Sさんも昔は一流企業の一流サラリーマンだったので、仕事に忙殺されていたことだろう。
ただ、今は老後に入り、数年に一度異国を自転車で旅して暮らす。
家は素晴らしい木材を使った家だ。しかし、豪邸というわけではない。シンプルに二人が老後を暮らすために不足なく、なおかつ余分なのがなく。
クラシックかジャズが流れている。
Sさんの昔のことは詳しくは知らない。
それでも、Sさんはただの元一流サラリーマンでもなく、ただの遊び人でもない。
だから、それは単なる小洒落た作り物のカフェで過ごすような時間とも違う。
何がすごいかと説明するのも難しい。
ただ、Sさん宅でSさん夫婦と会話をして過ごす時間というのは僕にとって本当に素晴らしい時間だった。人生の真理とまでいうと大げさな話になるかもしれないが、人生のゴールとは何か、何を求めて人は生きるのかというと、ああいう時間を過ごせる老後に辿り着くっていうのは一つあるんじゃないだろうか。

仙人ハウスとでも言うべき時間が流れる。

と言っても、話す内容は別段大したことでもなく、毎回同じような話なのだが。

ーーー

話の流れでS夫人に僕が大学をやめた理由を話したところ、つまり僕は狭い教室の中でたくさんの人が前を向いて密集している空間っていうのがどうしても気持ち悪くて駄目だった、ある意味、精神の弱い登校拒否的な理由で大学を去ることになったのだということを話したところ。
ーーあら、わたしは福田くんは旅なんかもドンドンして、今回の転職にしても、バイタリティを持って自由な思想でドンドン強く進むようなタフな人だから、大学を辞めたのも色々考えた上なのかと思っていた。
と言われた。

Sさん夫婦の時代は頭の良い人、向上心ある人が学生運動したり、大学を中退するというのは少なからずいたので、僕もそういう、言うなれば『良き中退』の人と思っていたようだ。

残念ながら僕の時代は、賢くて頭が良くてバイタリティがある人がポジティブな理由で大学を中退することって少ない。
まあ、稀にそういう人もいなくはないが。
それでも、僕の時代は、大学が無意味で腐ってると思う人も、一応は学歴だけは卒業のところまではする。

辞めるのは、僕のように残念な人だけだ。

ーーー

でも、S夫人が僕のことをそんな風に立派な賢い人と思っていたのは、面白かった。

僕の中では僕は僕だ。
二十歳の頃から変わらず。
でも、当たり前だが、外から見ると二十歳の僕と今の僕じゃ随分違うんだろう。
今の僕は自分の好きなことを通して自転車屋のプロショップの店長までした。そして、次の人生のハードルのために新しい仕事を探してトライする。
結構バイタリティに溢れた、タフで健全な人間というふうにも見えるのだろう。

これは大発見だった。
言われてみると確かにそういう風にも見えるのかもしれないと。

でも、まあ、実際には僕は僕で。二十歳くらいのころ、人生の悩みを憂鬱に考え、大学に行けなくて辞めざるをえなくて、やけっぱちに日本を飛び出した僕と。今の僕。僕の中では同じ僕だ。まあ、確かにいろいろ変わってはいるけど、本質は同じだ。

でも、Sさん夫人が僕のことをバイタリティあふれる人間だと思ってくれていたのはとても嬉しいことだし。

これを機に根暗は辞めてバイタリティあふれて、人生を進んでいく人間になってしまっても良い気もする。

まあ、現実は僕はとてもネガティブで後ろ向きに後ずさる人間ではある。
とてつもない速さで後ろに進むもんだから、逆にバイタリティあふれるのかもしれない。
自分では怖いと感じることから後ずさって後ろに進んでいるつもりでも、傍から見れば後ろ向きも前向きもなく、積極的に人生を動かしているように見える。
まあ、実際、全力で走ってはいる。

前向きだろうが後ろ向きだろうが、自分のために自分で考えて全力で何事かをし続けているって大事だ。

まあ、せっかくだから、これからは後ろ向きじゃなくて、ポジティブな感じで全力で生きていく方向にしていこうかな。

ーーー

自転車屋をやめると、あまり自転車を乗らなくなってしまうかもしれない。
段々と仕事ばかりになってしまうのかもしれない。

なので、また小説を頑張ってみようかなと最近思っている。
もちろん、仕事は大事だ。
父親だから稼がないといけない。
仕事が一番。

でも、父親としての人生も、夫しての人生も大事だが、自分の人生もやはり大事だ。
そりゃ、欲張りな話ではあろうが。
それでも、子供には子供の人生があり、妻には妻の。僕には僕の。
妻と子供を大事にしないといけないけれど、自分も大事だ。そして、自分の人生のためのことは自分がしないといけない。誰かがしてくれるわけじゃない。もちろん、助けはあるにせよ。

だからこそ、小説をまた一笑懸命やっていったほうが良いんじゃないかと思う。仕事と家族優先だけど。

ーーで、福田くんはどんな小説が書きたいの?
S夫人にそう言われて、答えに窮した。
書きたいものが分かっていれば、書いている。
そう、別に実際に書くという作業自体はさほど難しくない。
何を書きたいかが分かるってのが一番大事で、難しい。

まあ、のんびり行こうじゃないか。
とはいえ、ぼんやりのんびりしてるとあっという間に随分歳が過ぎてしまうので怖いが。

さて、なんの話書くかな。
短編くらいからリハビリしてみるか。

ーーー

新しい土地にもSさん夫婦のように、人生に光を導いてくれる人と出会えると良い。
そう、都合良く良い人と出会うのは難しいにせよ。
でも、多分、だれかそういう人が現れてくれる気はする。
何だかんだ、これまでは毎回そういう人が現れてくれた。
きっとそういう人に出会えるだろう。まずは信じるって大事だ。信じること、望まないことは訪れないから。

さようなら群馬。
群馬の二年間も実にてんこ盛りで楽しかった。

ま、そんなこんな。
posted by ちょろり at 01:07| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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