2010年08月13日

 ジャグリングで少し小金が入ったので、少しばかり飲みに行こうと思った。
 しかし、腹がいっぱいなのでやめようと思った。
 それでも、飲みに行った。

 最近は何かにつけて、過去を思い出してかなわない。
 過去なんてものは、悪くならない。今というのは悪くなりうる。未来というのも悪い未来につながる可能性もある。
 過去を思うなんていうのは人間として下卑ている。

 少しばかり飲んだ。
 自宅の前に繭があった。マンションでは時々壁に蛾が繭をはる。白くて柔らかそう、決して人工的な柔らかさじゃなくて、人工的な白さじゃなくて、そこにはとても汚い幹事があって、魅惑的な美しさがある。指先で触れたいとは思わない。靴の裏で蹴落としてやりたい。
 本当だろうか。自分は彼女の美しさのために蹴落とそうと思うのだろうか。直接触れずに靴の裏で蹴落とそうと思うのだろうか。
 もっと現実的な問題じゃなかろうか。
 一目見た瞬間に自分の脳裏には、自分の家の周りを飛ぶ蛾が浮かび、そこに嫌悪を覚え、排除しようと思っているのじゃなかろうか。それこそが本心じゃなかろうか。
 その上に綺麗な、一見、美しく見えるように、濃い絵の具、チューブのラベルに「ウツクシイ イロ」なんて書かれた絵の具をせっせと塗りこもうとしているんじゃないだろうか。

 蛾の繭は、ぽとり、と音を立てた。比喩じゃない。ぽとり、という音が確かに聞こえた。
 それから、繭はほんの少しばかり動いた。羽ばたこうとした。
 繭じゃなく、蛾だった。
 綺麗な蛾だと思った。繭と見間違えるような綺麗な蛾があるものだなぁ、と思った。
 それから、踏み潰したくなった。
 黄色い汁がマンションの廊下の床にこびり付くのを眺めたくなった。

 結局、踏み潰すのは辞めた。
 どうして辞めたんだろうか。
 部屋に入ってからも、黄色い汁を思った。
 純白の蛾が潰れた臓腑を人工的な廊下の床に張り付かせる。

 昔を思った。
 あの女が自分を叩き潰して、黄色い汁を出して、自分は潰れていれば。
 それでも、自分は知っている。自分の体はどう潰れたって、赤い血に異臭しか出ない。純白に黄色などはできない存在であると。

 もう、最近の、いや、今の自分には右も左も分かっていないんだと思う。

 そんなこんな。
posted by ちょろり at 03:37| Comment(0) | 生活記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする